1 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 18:48:45 ID:irfbl9/k (1/48)
少女「私さ、明日、引っ越すんだ」
少女「え、知ってたの、どうして」
少女「そっか、うん、そうなんだ」
少女「うん、まあ、しょうがないよ、お父さんのお仕事の都合なんだから」
少女「寂しいよ、そりゃあ」
少女「でもさ……うん、しょうがないよ」
少女「どこって……大阪」
少女「遠いよ、うん」
元スレッド情報
少女「10年後も想い変わらず貴方を好きでいたなら」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1338976125/
3 : 以下、名無しが深夜にお送りします[>>2 違うwww] : 2012/06/06 18:54:15 ID:irfbl9/k (2/48)
少女「でもさ、10年経ったらさ、また帰ってくるから」
少女「絶対、絶対帰ってくるから」
少女「うん、だから、その時までさ」
少女「10年後も想い変わらず貴方を好きでいたなら」
少女「私のこと、見てくれるかな」
あいつがそう僕に告げたのは、小学校の卒業式の前日だった。
次の日、あいつの言った通り、あいつは僕の知らない街へ行ってしまった。
そして、僕らは10歳年をとった。
4 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:04:47 ID:irfbl9/k (3/48)
カランカラン
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか」
男「あ、えっと、待ち合わせで」
女「……」フリフリ
男「あ、わかりました」
「どうぞごゆっくり」
女「やほ、久しぶり!!」
男「……びっくりしたよ、いきなり連絡くれるんだもんな」
女「へへ、10年経ったら帰ってくるって、言ったじゃん」
男「ああ、もう10年経ったんだな」
5 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:11:29 ID:irfbl9/k (4/48)
女「早いよねえ」
男「ああ」
女「……」
男「……」
女「なんか、感想ないの」
男「感想って」
女「10年振りだぞ」
男「あ、ああ、ずいぶん綺麗になったな」
女「おっと、素直に褒められるとは思わなかった」
男「口は回る様になっただろ」
女「口下手だったのにねえ」
6 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:18:26 ID:irfbl9/k (5/48)
男「髪も伸びたな」
女「うん、今はずっと伸ばしてるの」
男「小学校の頃はショートカットのイメージが強かったけど」
女「……」
女「似合ってない??」
男「いや、すごく似合ってる」
女「っへへ」
男「おれ、長い方が好きだし」
女「でしょでしょ」
7 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:35:20 ID:irfbl9/k (6/48)
男「ちょっとアクセント、違うんじゃね」
女「あー、ちょっと関西弁混じってるかも」
男「だろうなあ」
女「微妙に、ね」
男「がっつり関西弁だったら面白かったのに」
女「それ、喋りにくくない??」
男「確かに」
女「やっぱこっちの言葉の方が、落ち着く」
男「そっか」
8 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:44:43 ID:irfbl9/k (7/48)
男「ていうか、どうやっておれの携帯……」
女「あ、それね、最初は小学校に連絡してみたんだよ」
男「おいおい、セキュリティ甘いな小学校」
男「個人情報漏らすなよ」
女「あーでもダメダメ、教えてくんなかったの」
男「あっそ、そりゃあ安心した」
女「でさ、どうしよっかなって思ったときにさ、名前聞かれてさ、何年卒の~って名乗ったの」
男「ああ」
女「そしたらさ、電話の相手がさ、びっくりしててさ」
女「あんときの同じクラスのミサキだったのよ」
男「ああ、そっかそっか、ミサキあの小学校の先生になったんだっけ」
9 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 19:57:00 ID:irfbl9/k (8/48)
女「そんで思い出話とかさあ、盛り上がってね」
男「でも、ミサキにもおれの携帯教えてないはず……」
女「最後まで聞いてよ」
女「でさ、ミサキの情報網ハンパなかったのよ」
女「あの子友だち多かったからねえ」
女「色んな人にメールしてみて、アドレス知ってる人を捕まえたわけ」
男「はっは、まあ、あいつはいつもクラスの中心にいたからな」
男「情景が目に浮かぶよ」
女「でしょ、私もなんか懐かしかったもん」
10 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:05:09 ID:irfbl9/k (9/48)
男「他のみんなには会ったのか??」
女「ううん、まだこれから」
女「だってこっちに帰って来たの、一昨日だもん」
男「そっか」
女「前と同じマンションだよ」
男「あそこ、社宅だったよな」
女「そうそう」
女「ま、当時の私は社宅って言われても意味わかってなかったけど」
男「ははは」
11 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:14:13 ID:irfbl9/k (10/48)
女「ねえ、学校辞めて、映画作ってるんだって??」
男「ああ、サークル活動なんかじゃない、本物の映画作りだ」
男「といっても、まだまだ素人レベルからちょっと抜け出したくらいだけどな」
女「ずっと映画作りたいんだって、言ってたもんねえ」
男「ああ」
女「夢、叶ったんだ」
男「ん、まあ、そうかな」
女「すごいなあ」
女「羨ましいなあ」
12 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:20:06 ID:irfbl9/k (11/48)
男「お前は、今はなにやってるんだ」
女「花嫁修業!!」
男「……ん??」
女「……つまり、就職浪人」
男「おいおいおい、大丈夫かよ」
女「大阪にいる間もね、こっちの会社受けたりしてたんだけど……」
女「全滅!!」
男「あー、そっか」
女「だから、まあ、バイトとかでいいからとりあえず探してるの」
男「ふうん、大変だねえ」
13 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:27:31 ID:irfbl9/k (12/48)
女「他人事ねえ」
男「だってさ、男は死活問題だけど、女は永久就職があるし」
女「あー男女差別だ」
男「はっは、苦しいのは男の方だっつーの」
女「でも結婚してもさ、専業主婦でやってけるほど、甘くないでしょ」
男「まあ、そうだな」
男「お前、彼氏はいるのか」
女「いたけどね、別れてきた」
男「ん」
女「大阪に置いてきたの」
15 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:39:38 ID:irfbl9/k (13/48)
男「どうして」
女「どうしてって……」
女「え、あのときの約束、覚えてないの??」
男「約束、約束……??」
女「うっそ、信じらんない!!」
男「あーはいはい、あれね、卒業式の前の日のね、思い出した思い出した!!」
女「うっわー乙女の純情弄ばれたー」
男「思い出した思い出した思い出した!!」
女「酷いわ本当、この男最低だわー」
男「いや、ちょっと、あの、御免」
女「嘘よ」
男「へ」
16 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 20:57:32 ID:irfbl9/k (14/48)
女「本気にしないでよ」
男「お、おう」
女「本当はね、ただ単に合わなくなって別れただけよ」
女「遠距離できるほど、お互い強くもなかったし」
男「……そっか」
女「焦りすぎー」
男「いや、だって、本気で、かと思って」
女「あーのーね、あんなの10年も前のことじゃん」
女「むしろ青春のいい思い出じゃん」
男「はは」
17 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 21:07:46 ID:irfbl9/k (15/48)
女「あんときのクラスのみんなはどうしてるかな、知ってる??」
男「んーと、そうだなあ」
男「あ、カイト、覚えてるか」
女「はいはい、野球やってた」
男「あいつな、甲子園出たぞ」
女「うっそ!! うっそ!! マジで!!」
男「2回戦までだったけどな、テレビで応援したよ」
女「うそー知らんかった……」
男「今は大学で野球やって、社会人野球に進んでるはず」
女「へえ」
男「やっぱ今でも、プロ目指してるみたいだよ」
女「そっかあ、プロになれるといいなあ」
18 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/06 21:17:16 ID:irfbl9/k (16/48)
男「それから……あ、ヨウコから結婚しましたって報告があったな」
女「ヨウコ!? 懐かしい!!」
男「去年だったな」
女「そっかあ、学生結婚??」
男「いや、どうなんだろ」
男「相手のことはよく知らない」
女「早いねえ」
男「まあ、女の方が結婚は早いからなあ」
女「同い年の可能性もあるよ??」
男「あ、そうか、そういやそうだな……」
22 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 20:08:17 ID:afXAzBGI (17/48)
女「21歳で結婚かあ……」
男「どうやって生活すんだろな、ってちょっと思った」
女「バイトじゃ生きてけないよね」
男「生きてけないってことはないだろうけど……」
女「でも、そんなに焦らなくても……」
男「いや、別に焦ってたかどうかは知らないけど」
女「デキ婚かな」
男「さあ、どうかな」
女「ありうるよね」
男「大いにな」
26 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 20:38:27 ID:afXAzBGI (18/48)
男「お前は結婚願望とか、ないのか」
女「まーだまだ」
女「ていうか料理、できないし」
男「はっは」
女「なによ」
男「いや、6年の時の調理実習でも、そうだったなあと思ってな」
女「あ、覚えてるの!?」
男「おう、覚えてる覚えてる」
女「いや!! 忘れて!!」
男「確かオムライス作りで……」
女「ぎゃー!!」
男「酢が……」
女「ぎゃー!!」
27 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 20:47:47 ID:afXAzBGI (19/48)
男「掃除は」
女「苦手」
男「洗濯は」
女「たたむのが、苦手」
男「……」
女「こ、これから覚えるし!!」
男「どうやって、だよ」
女「お、お母さんに教えてもらいながら……」
男「……」
女「が、頑張るもん!!」
男「はいはい、頑張れ」
28 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 20:57:27 ID:afXAzBGI (20/48)
男「彼氏と別れない方が、よかったんじゃないの」
女「どうして」
男「だって、その彼氏、家事得意なんだろ」
女「……」
女「なんでわかるの??」
男「なんとなく」
女「ふうん」
男「一人暮らししてる大学生ってところか」
女「なんでわかるの!?」
男「なんとなく」
29 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:08:22 ID:afXAzBGI (21/48)
男「お前は甘えるタイプだったからなあ」
女「そ、そんなの、10年も前のことじゃん」
男「10年も前からそうなんだから、そんな簡単には変わらないんだよ」
女「う」
男「今も、甘えに来たんじゃないの、おれに」
女「……」
男「いや、御免、責めてるわけじゃないからな」
女「……」
男「久しぶりに会えて、本当に嬉しいんだから」
男「それは本音」
30 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:19:01 ID:afXAzBGI (22/48)
女「甘えてたのかなあ」
男「……」
女「甘えてるのかなあ」
男「ま、そういう要領のいいところも、お前のよさだよ」
女「そっか」
男「切り替えの早いとこも、な」
女「あはは」
31 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:28:39 ID:afXAzBGI (23/48)
女「そっちは??」
男「ん」
女「今、どうしてるの??」
男「あ、えーと、その」
女「ん??」
男「怒らないで、聞いてくれるか」
女「??」
男「去年、結婚したんだ」
女「……!!」
男「御免」
女「謝んないでよ」
34 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:38:24 ID:afXAzBGI (24/48)
女「おめでとう!!」
男「お、おう」
女「やーそっかあ、結婚かあ」
男「はは」
女「10年経ってんだもんねえ、そっかあ」
男「恥ずかしくて、なあ」
男「みんなにはあんまり言ってないんだが」
女「なんでよ、言ったらいいじゃん、みんな喜んでくれるって」
男「そうかなあ」
女「そうだよう」
35 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:46:36 ID:afXAzBGI (25/48)
女「え、まさか、ヨウコと!?」
男「違う違う違う!! 偶然!!」
女「えーヨウコも去年なんでしょ??」
男「おれの、その、結婚相手は……」
女「誰なの??」
男「その、映画関係で知り合った人」
女「へえ」
男「女優さん」
女「え、すごい!! 美人なんじゃないの??」
男「う、うん、まあ」
36 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 21:56:11 ID:afXAzBGI (26/48)
女「え、いくつの人??」
男「28」
女「はー大人の女性だあ」
男「はは」
女「でも、歳の差感じない??」
男「うん、まあ、それはあるかもね」
女「えーっと、6歳差かあ」
男「一緒に小学校通わないレベル」
女「あ、ほんとだ」
男「成人式んときに中学校の制服着てるレベル」
女「うおー」
37 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 22:04:05 ID:afXAzBGI (27/48)
男「おれが食ってた駄菓子とか、知らないときもあるし」
女「駄菓子ねえ」
男「逆に向こうが、俺の知らない駄菓子食ってたりして」
女「あはは」
男「アニメもさあ、微妙に時期がずれてたりして」
女「でも男女なんだから好みとかも違うでしょ」
男「まあ、そうだけどさ、よく見てたバラエティとかもさあ」
女「そりゃあ流行りはすぐ入れ替わるからねえ」
38 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 22:25:07 ID:afXAzBGI (28/48)
女「子どもは??」
男「んん……それはまだ」
女「ほしい??」
男「そうだな、ほしいな」
女「何人??」
男「男と女、一人ずつ、かな」
女「計画的ですなあ」
男「ははは」
女「女の子が生まれたら、私の名前、つけてよね」
男「なんでだよ、恥ずかしいよ」
39 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 22:34:49 ID:afXAzBGI (29/48)
女「子どもかあ」
男「未来の話だよ」
女「でも、私も、子どもほしいなって思うときあるんだよ」
男「はっは」
男「10年前じゃあ考えられない会話だな」
女「ほんと」
男「お前の子どもは美人だろうなあ」
女「なにそれ、お世辞??」
男「いいや」
40 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 22:48:11 ID:afXAzBGI (30/48)
女「恥ずかしいこと、言わないでよう」
男「クラスで一番、可愛かったからな、お前は」
女「ちょちょちょ、マジで!?」
男「マジで」
女「え、なんで言ってくれなかったの」
男「言えるわけねーだろ、そんなこと」
女「えー」
男「今言ったんだから、いいだろ」
女「なに照れてんの」
男「うるさい」
41 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 22:56:58 ID:afXAzBGI (31/48)
女「そっかそっかあ、そんな風に思ってくれてたんだ」
男「……」
女「じゃあ、なんで私を置いて結婚したの??」
男「……ぐっ」
女「あはは、冗談」
男「……」
女「私もねえ、男の子と女の子、両方ほしいなあ」
女「それで、男の子にはサッカー、女の子にはピアノを習わせるの」
男「はは、ありがち」
女「いいでしょ」
42 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 23:08:16 ID:afXAzBGI (32/48)
男「おれは……一緒にキャッチボールがしたいな」
女「あ、男の人っぽい」
男「だろ」
女「男の人、みんなそう言うよね」
男「みんなの夢だよ」
女「でもさ、相手が女優さんじゃ、難しくない??」
男「そうだな、今撮ってる映画がひと段落して、引退を考えられたら、かな」
女「奥さん、引退するの??」
男「まあ、おれが養っていける収入を得ることが大事なんだけど」
女「ま、そりゃそうね」
43 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 23:24:37 ID:afXAzBGI (33/48)
男「今んとこ、向こうの方が多く稼いでるから」
女「うわ、そりゃあ長く働いてもらわないと」
男「俺も頑張ってんだけどなあ」
女「ねえ、どんな映画、撮ってるの??」
男「聞きたい??」
女「聞きたい。それに観たい」
男「今のやつはね、SFっつーか、なんつーか」
女「SF!? 特殊効果ズドーン!?」
男「いや、そんな派手なやつじゃなくて」
女「首がブシュー!?」
男「それじゃスプラッタだ」
44 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/07 23:32:17 ID:afXAzBGI (34/48)
男「演じるのは人だし、特に派手なメイキャップもしないんだけど、死神とか出てくる感じ」
女「ああ、はいはい」
男「低予算で、演技力と演出勝負!! みたいな」
男「お金ないからね、仕方ない」
女「そっかあ、でも面白そう」
男「できたら観てくれる??」
女「絶対観る!!」
47 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 19:49:21 ID:S6IRKa4E (35/48)
…
男「さ、そろそろ出るか」
女「うん」
男「今日、このあとは??」
女「別に予定はないよ」
男「そっか」
女「なに、飲みにでも連れていってくれるの??」
男「んー、それもありだけど……」
女「奥さんが怒るか」
男「怒るってことはないけど、まあ、よくはないかなあ」
女「いいよ、別に」
男「また今度、予定立ててからなら……」
女「うん」
48 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 19:57:58 ID:S6IRKa4E (36/48)
女「御馳走様」
男「ケーキセットくらい、奢るって」
女「ありがとう」
男「うん」
男「なにで来た??」
女「歩き」
男「そっか、おれもだ」
男「送ってく」
女「うん、ありがと」
49 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 20:10:13 ID:S6IRKa4E (37/48)
…
男「この辺歩いてると、誰かに会うかもしれねえなあ」
女「誰かって、卒業生??」
男「うん、卒業生とか、他の先生とか」
女「懐かしい??」
男「ああ、おれもずっと会ってないからな」
女「気付いてないだけで、すれ違ったりしてるかもよ」
男「ありうる」
女「さっきの喫茶店にバイトでいるかもよ」
男「……ありうる」
50 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 20:19:48 ID:S6IRKa4E (38/48)
男「この時間になると、静かだな」
女「子どももいないね」
男「昔はさ、暗くなって怒られるまで遊んでても平気だったろうけどさ、今は……」
女「不審者とか、多いもんね」
男「そうそう、下手に外で一人にさせられないんだろうな」
女「怖いね」
男「今は、おれがいるから大丈夫」
女「それは心配してません」
51 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 20:30:03 ID:S6IRKa4E (39/48)
男「バッカ、若い女性も同じくらい危ないんだぞ」
女「若い女性って」クスクス
女「それにここ、住宅街だよ」
男「それでも危ないの」
女「そうかなあ」
男「そうだよ、お前はもっと危機感持つべき」
女「うーん」
男「なんだよ」
女「なんかねえ、小学校時代に戻った気分なの」
男「はあ」
女「ああ、こんなんだったなーって思いだしちゃって……」
男「戻ってこい、22歳の現実に戻ってこい」
52 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 20:42:06 ID:S6IRKa4E (40/48)
女「小学生気分だから、危機感がないのかな」
男「……」
男「小学生気分に戻ったのは、おれといるから??」
女「うん、多分そう」
男「……」
女「あっは、やっぱ、吹っ切れないや」
男「……」
女「私ね、恋とかよくわかってなかったけどさ、やっぱ、好きだったんだ」
女「大好きだったんだ」
53 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 20:53:26 ID:S6IRKa4E (41/48)
男「ん……」
女「結婚したって聞いたとき、おめでとうって、自然に言えたけど」
男「うん」
女「やっぱ、辛いや」
男「……うん」
女「あ、や、だからどうこうってわけじゃないんだよ」
女「10年振りに顔が見れて、声が聞けて、それで満足っていうか……」
男「嘘吐け」
女「んっ」
男「それが満足してるやつの顔かよ」
女「……」
54 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:01:14 ID:S6IRKa4E (42/48)
男「勝手に結婚して、悪かった」
女「そんな、勝手だなんて」
男「お前が俺のこと好きでいてくれてるのも、知ってて」
女「やめてやめて、優しくしないで」
男「今日、会うのは楽しみだったけど、責められるのも、覚悟してた」
女「責めるつもりなんかないんだって、あれは冗談だってば」
男「だけど……」
女「いいの、勝手なのは、私の方なの」
女「勝手に好きになって、勝手にずっと好きでいただけ」
女「勝手に約束なんか、した気でいただけ」
55 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:14:16 ID:S6IRKa4E (43/48)
男「そんなこと……」
女「だから……」
男「え??」
女「……んっ」チュ
男「……」
女「っへへ……」
男「お前……」
女「キス、ひとつだけ貰っていくね」
男「……」
56 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:23:06 ID:S6IRKa4E (44/48)
女「御免ね、奥さんいるのに、御免ね」
男「いや、その」
女「もう、私のことは、忘れてくれて、いいから」
男「馬鹿、忘れられるか」
女「忘れて」グス
男「……」
女「今までありがとう」グス
女「小学生のときも、今も、好きでいれて幸せだったよ」グス
男「……」
58 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:36:42 ID:S6IRKa4E (45/48)
女「送ってくれて、ありがとう」
男「ん」
女「今度会うときは、映画ができた時か、私が結婚した時、ね」
男「あ、ああ……」
男「あ、あのさ」
女「ん??」
男「おれも、本当は、お前が大きくなっておれのところに帰ってくることを期待してた」
女「……」
男「お前はクラスで一番、可愛かった」
女「……」
男「お前はいつもおれのそばに寄ってきてくれた」
女「……」
男「好きだった。本当は、好きだったんだ」
男「これもさ、恋とは、違う感情なのかもしれないけど……」
59 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:43:31 ID:S6IRKa4E (46/48)
女「あほ、遅いよ」
男「うん、御免」
女「あーあ、こんな若い子と結婚するチャンスなんて、なかなかないのになあ」
男「……はは、それは確かに」
女「いい思い出にできるよう、私、これから頑張るよ」
男「ああ」
女「奥さんと、幸せにね」
男「……ああ」
60 : 以下、名無しが深夜にお送りします[] : 2012/06/08 21:53:00 ID:S6IRKa4E (47/48)
女「今日が、本当の卒業の日、だね」
男「そんな歌、あったなあ」
女「10年越しの、卒業……か」
男「証書は、ないけどな」
女「っへへ、じゃあね、ばいばい、先生」
男「……ああ、さよなら」
★おしまい★
64 : HAM ◆HAM/FeZ/c2[] : 2012/06/08 22:09:32 ID:S6IRKa4E (48/48)
ありがとうございました
よければこちらもどうぞ
http://hamham278.blog76.fc2.com/
現在 男(34) 女(22)です
- 関連記事
-